月下吟

 

 

初めて会ったとき

まず惹かれたのは
「声」 だった
 
 
しんしんと
心の奥に
降り積もるような
「声」――――
 
 
そして 「指」
白く細い 形のよい「指」―――
 
 
 
彼の名は知っていたから
 
「化生の者を親に持つ 鬼神をも操る陰陽師」 だと
 
 
ならばあの「声」と「指」で
鬼神を操り 闇を祓うのだ と
―― そう思ったら 目が離せなくなった
 
 
喧しい人々の口の端に どんな噂がのぼろうと
彼は常にゆるぎない
 
たとえば「男」とか 「女」とか
殿上人で「ある」とか 「無い」とか
そんな人の世の括りは関係なく
 
たとえば「人」でなく 「妖」であったとしても
日ごと姿を変える 月のように
 
彼が 彼で在ることは
変わりないのだと
 
 
 
 
闇の中
理を告げる 
彼の声に耳を澄まし
 
行き先を示す 
彼の指を
 
求めている
 
 
     



 
『月下吟』 ― 了 ―













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