果たしてこちらに置いていいものかどうか・・・?
しかしまぁ絵掲に描いたし今更っちゃ今更だよな〜・・・
なSSですので覚悟の程を・・・

桃色吐息


  
昔々、爺は山へ芝刈りに、婆は川へ洗濯に。
 
 美しき桃流れ来しを取りてかえる。
   
   爺「ああくたびれた。早く帰って婆が顔でもみよう。」
   
   婆「やれよい桃かな。もうひとつ流れて来い。爺におませう。」
  
 爺婆桃を服し、忽ち若やぎて一子を設け、桃太郎と名づく。


                                - 赤 本 『 桃太郎昔咄 』 -




ふんわりと、陽射しの暖かな日だった。
さぁ今日一日をどうやって過ごそうか・・・と、山岡百介は居住している離れの縁側に座ってぼんやりとしていた。
巷の人々はとうに働いている刻限だ。
事実、表店の蝋燭問屋生駒屋からは、商いのざわめきが聞こえていた。
それを聞くともなしに耳にしながら、溜息を吐く。

 私はなんて役立たずなんだ・・・

そう口の中で呟いて、奥に入ろうとした刹那。
目の前が真っ暗に。ぬっと大きな影が立ちはだかったのだ。
「ひゃ・・・」
悲鳴を上げる間も無く口を塞がれ、部屋の中へと引き摺り込まれる。
外に続く腰高障子を閉める音が、ぱしんと高らかに響いた。

障子紙を透る柔らかな光を背に立つ影には見覚えがあった。
「な・・・長耳さん・・・?」
「おうよ。先生ィ」
大きな影がにやりと笑うのが分かった。
「どうしたんです、いったい?何か有ったんですか」
「大有りさァ」
「うわっ!」
背後から甘い声が聞こえ、次いで柔らかい指が頬を撫ぜる。
「おぎんさんまで!?」
これはいよいよもって尋常ではない。
闇の世界に生きるこの二人が、堅気である百介の処に、しかも昼日中に訪れるなどとは。
いつも必要以上に係わらないようにと、百介が踏み込もうとすればするほど逃げてゆく。
そんな者達なのだ。
いくら離れとはいえ大店の敷地内。どこに人目があるかわからないというのに・・・
「あの・・・又市・・・さんは?いっしょでは〜・・・」
姿が無い事に気付き、百介は急に不安になった。
「その又市なんだよぉ。先生」
「・・・え?」
おぎんの言葉に胸がずきり、と痛む。
「又の字の野郎、下手ァうちやがってっよ」
長耳の溜息混じりの声が遠くに聞こえる。
「まさか・・・まさか、怪我を?傷は?酷いのですか?それとも・・・」
蒼褪めておろおろと問い掛ける百介に、おぎんは肩を竦めて長耳に目をやる。
長耳はと見ると、小脇に抱えていた包みを畳の上に置いて、ぽんぽんと軽く叩いた。
「あの・・・それは・・・」
それは桃色の布で包まれていた。
色も色だが、形も何か桃に似ているようで。微かに甘い匂いまでしている。
それが縄で雁字搦めに括ってあった。
「え・・・と。これを解け・・・って事ですか?」
どちらにともなく問い掛けると、二人はそうだ。というように頷いた。
「・・・・・・・」
いったいどういう事なのか、毛ほども理解出来ぬ。
しかし又市の進退に関係しているとなれば、悠長な事はしていられない。
百介は震える手で、桃色の包みを縛る縄を解き始めた。
余程固く縛ったのか、縄は中々解けなかった。
それでも漸う緩めると、包みがもぞりと動いた。
「ま・・・!」
捲れた布の間から行者包みの端が覗く。
ではこの中に又市が居るのかと、百介は縄を解くのももどかしく、文机の抽斗から小刀を取り出すと包みの戒めを切り裂いた。
「又市さんっ!」
「ったく!てめぇら!いってぇどーゆー了見でぇ!」
ぱらりと。桃色の包みが開いた途端、いつもの威勢の好い啖呵が聞こえた・・・

が。

それは聞きなれた声ではなく。
まるで鈴を転がすような。まことに愛らしい声で。
そして声の主もまた。桃のような肌をした、愛くるしい童女のようで。
「な・・・え?・・・はい〜ぃ?」
言葉を失いへたり込む百介の背後で、おぎんと長耳の大きな大きな溜息が聞こえた。








後半へ続く!(笑)〜
<04,1108>

一休み、一休み・・・心の準備は大丈夫かぇ?
出来てない御仁はここでお帰りな













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