濯 枝 雨


急な雨の強さに辟易し 急ぎ逃れた大樹の陰
辺りには まるで卒塔婆の様に立ち並ぶ背の高い紅い花
その色に 過去の嫌な思い出が蘇り 山岡軍八郎は眉を顰めた

「山岡様ァ…御気分でもすぐれねぇんで?」
「…御行殿」

花の陰から こちらを覗く影の声

「いつからそこに?」
「つい先程でやす。急な雨で」
「ああ、まったく。酷い雨だ」

軍八郎は空を見上げる
その表情は 何時に無く固い

「軍八郎様」
「んん?」
「奴がお邪魔ならァ…去ねやすぜィ?」
「何を突然。御行殿が邪魔なわけなかろう?何故そのような事を言うのじゃ」

矮躯の御行は応えず 花の陰で口角を上げただけ

「…そなた…何を知っておる…」
「何も」

奴はただ…と低く笑いを含んだ声が間近で聴こえる

「憂さがあるならァ…祓って差し上げやしょうか…と」
「御行殿…」
「どうせこの雨でェ、全部流れてしまいやすよ…」

ねぇ軍八郎様…と囁く御行の眼が
雨の中
花と同じ色をしているように見えた





『濯枝雨(たくしう)』とは、木の枝を洗うがごとき大雨の事

貧困ゆえに、軍兄は色々と苦労してきているんですよ…きっと
以前描いたネタを参考にして頂きたい(オイオイw)





07,07,13


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